地下鉄でスマホをいじっている人は多い。文庫本を開く人は少数派だ。自分は契約しているギガ数が最低限なので、スマホを利用できる場は限られている。それで不都合を感じていないので一向に構わない。だいたいにしてスマホで何ができるというのか。せいぜい暇つぶしにネットサーフィンしたり、ゲームをやったり、漫画を読んだり、その程度ではないだろうか。もちろんビジネスツールとしてフル活用している人もいるだろう。インターネットで世界の裏側の人間とも繋がっているだろうが、地下鉄の隣に座った人とはそ知らぬふりで何の繋がりも生じない。「スマホは他人の始まり」なんて言葉ができるかもしれない。その点、若いお母さんが抱っこする赤ん坊の笑顔は強力な縁結びのきっかけになっている。隣に座ると自然に赤ん坊とお母さんに愛想を振って会話が始まる場面に遭遇する。人と人との直接のふれあいこそ大事にしなければならない。まけまけではメンバー同士の連帯意識がはっきりと芽生えている。もちろん空間が手狭なので物理的に隣り合わせなのだが、心理的な距離感が近いため肌の温度が伝わってくる。自分はおしゃべりが好きなので、相手が一言発したら、十倍に返答してしまう悪い癖がある。もちろん相手が喜んでくれるような会話を心がけている。話し上手は聞き上手というのだから、いろいろ話を聞きたいが、口下手の人との会話を成立させるためには、ある程度こちらから話を振ってあげなくてはならない。根掘り葉掘りの質問攻めにならないよう、適度な距離感を保ち会話を進めなければならない。こんな風に気を使うので、慣れないと疲労困憊になってしまう。そんな時も赤ん坊のように笑顔を忘れてはならない。まけまけメンバーはみんないい笑顔をしている。ストレッチで身体の節々が痛く悲鳴を上げても笑っているぐらいだ。笑う角には福来る。最初は頬の筋肉が上手く動かず引きつってしまうかもしれないが、作り笑いをしているうちに毎日が楽しくなるのだ。笑い袋につられて笑い出すように。
イガチョフ