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イガチョフ

俳人デビュー

肌寒い一日だった。前日が20度を超えていたにもかかわらず今日は5度に満たない気温で身震いした。風邪も強く手袋があっても良かった。まけまけの帰りはAさんに付き合って歩いて帰ることにした。血液検査はしたことがないのでコレステロールや中性脂肪の値が全くわからない。暴飲暴食はしていない。自覚症状もないのでわざわざ病院で調べる必要もなさそうだ。身体を動かすのが一番の薬である。これからも機会を見計らって歩きたい。一人で独り言をつぶやきながら歩くのは不気味なので同伴者がいてくれるのは頼もしい。Aさんは先日成人式の振袖の衣装合わせをしたばかりである。目元が涼やかで、きれいな顔立ちをしているので化粧映えするだろう。「一緒にしないでください」と怒られるかもしれないが、ケバいメイクのデパートの店員やホステスにはない魅力がある。あどけなさを感じる初心な少女と大人になりかけていない中途半端さがごちゃ混ぜになっているところが素敵だ。自分と同年代の女性は、写真写りは良くてもまじかで接するとボロが見え隠れする。特にスマホは加工が可能でかなり差し引いて見ないと、直接会った時がっかりさせられる。やはり若さには叶わない。今日は午前中の授業で初の試みがあった。俳句を作ることになった。基本的なルールである語数と季語を守ることだけを頭の隅にいれ取り組んだ。石川啄木に影響されて、昔短歌を悪戯で作ったことがあるが、俳句を詠むのは今回が初めてだ。次の三句を詠んだ。「草いきれ蜜蜂沈む羽の音」「雪路に融けずに残る匂ひかな」「藍深く里に吹く風梅雨の明け」最後の一種は遊び心でAさんに捧げさせてもらった。Aさんも健闘したが「恥ずかしくて見せられません」とはにかんだ。「裸になるよりは恥ずかしくないでしょう」とからかうと、「さすがに裸は困ります」と恥らった。自分は創作活動のときが一番生き生きしている。小説も本腰を入れたい。自己満足で満足しているが、広く共感を呼ぶことで世界観を拡大させることも生きがいと言えよう。

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