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イガチョフ

剛毛一直線

 一日の始まりが最悪だ。毎朝必ずそうである。何が原因かというと髪の毛の寝癖だ。起き抜けにトイレに行き洗面台の鏡を見る。左右の横側にそれぞれ筋ができていて髪の毛が飛び跳ねている。剛毛な上に短髪にしているので余計に寝癖が目立つ。これを直さないと外出できない。とりあえず髭をT字カミソリで剃り、洗顔剤で顔を洗う。お湯は使わず冷たい冬の水で我慢だ。これは慣れているので、十分気持ちがいい。さてその後である。髪の毛の寝癖直しに取り掛かる。まず水道水を出しっぱなしにして、手のひらで水をすくい跳ねている髪を濡らす。十分濡れたところでフェイスタオルで水分をふき取る。なんとなく落ち着いているように見受けられるが、ここからが大変で、ドライヤーとヘアブラシで、一生懸命髪の毛をねじ伏せる。とかすという感じではない。ハリネズミのような直毛に近い。水の力とドライヤーの熱では不十分で、仕上げに寝癖直しスプレーを吹きかけさらにドライヤーの熱風を当てる。このスプレーは百円ショップで購入した物で、薬剤が入っているようには思えない。粘り気も何もない。ただの液体だ。それでも仕上がりはいい感じがして、妥協して整髪が完了する。熱風が顔面にかかるので額の皮膚が乾いて突っ張ってしまう。馬油クリームを塗って保湿する。髪の毛以外のケアもしなければならない。本当に面倒くさいことを毎朝続けている。だから、寝癖直しで労力を使い果たし、朝ごはんを食べても爽やかになれない。ヘアワックスで整えることもはばかれる。もうどうでもいいやになってしまい、多少変なヘアスタイルでまけまけに向かう。次に床屋に行ったら、寝癖対策で長めに切ってもらおうと思う。子供の頃はさらさらヘアだったのに、思春期を境に髪の毛が硬くなっていった。髪の毛と爪は同じ成分らしいが、両手の親指の爪に傷のようなでこぼこが出ている。これは食事が偏っていた時期があったのではないかと指摘された。この先も寝癖直しに時間をとられると思うだけでげんなりだ。

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