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イガチョフ

心臓の声

 看護師がいないメンタルクリニックに通院している。医師1人に受付嬢4人体制だ。初診の際、外部から臨床心理士が来て問診となる。そのため血液検査も血圧測定もできない。まけまけでそのことを話すと、血圧測定器もあることだし毎朝測ることになった。血圧など気にして生活したことがないので、数値がどんな値を示せば理想なのか良くわからない。実際測ってみると非常に安定している。冬場で寒い外気の中歩いて通っているため、まけまけ到着後すぐに計るのは好ましくない。ホットコーヒーを飲んで身体を温めてから測ればいいが、午前中のストレッチと筋トレが始まってしまい、タイミングを逃してしまう。筋トレはけっこうきつく、いい具合に体が温まる。この状態で血圧は測れないので、また息が整うまで着席している。右腕にベルトを巻きマジックテープで絞る。圧がかかり、手に血の気が通わなくなると、圧が徐々に弱くなっていく。気の抜けたような音がして圧がぬけきると、液晶版に血圧と脈拍が表示される。理想的な値に安心する。たかが血圧であるが、測定することで体の不調を読むことができる。実際、まけまけに通所しているメンバーの一人がここで血圧を測定し、血圧が不安定で病院にかかったところ、不整脈の診断が下ったという。これは見逃してしまえば、大きな病へ発展しかねない。「命拾いした」と言っていた。心臓は生まれたときから死ぬまで一瞬も休むことなく拍動し続ける。こんな過酷な臓器は他にあるまい。心臓が止まったときに人は死ぬとは昔の死の定義で、現在は脳死を持って人の死とすることが定着している。しかし、心臓こそ命の象徴のような気がする。全力疾走すれば胸はバクつく。全身に血液を運び、細胞に酸素を供給する。心はどこにあるのかと問われれば、やはり胸に手を当てるのではないだろうか。胸の中には温かな心臓が収められているのだ。冬場なのでなかなか外で活動する機会がない。春を待たねばならないが、できればみんなとウォーキングに出掛けたいものだ。

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