節分の朝、鏡を見て言葉が出なかった。右目の半分が赤く染まっているではないか。痛みもかゆみもない。不安になって娘に言うと、「気持ち悪い」の一言で、気遣いの欠片もない。前日、まけまけで一日早い節分の行事をしたばかりだ。学食に恵方巻といわしの蒲焼が出た。恵方巻は大葉が入っていて爽やかな味わいだった。いつも食べているおにぎり2個と同じ量のご飯であったというが、キュウリやかんぴょう、そして卵などを一緒に巻いたのでボリュームがあった。欲張りなので、切り落とされ残っていた部分も食べた。「ここが一番美味しいんだよね」食パンの耳みたいなものだ。節分にイワシを食べる慣わしがあるのは知らなかった。鬼がイワシの独特なにおいを嫌うためと考えられていて、家の戸口につるすと鬼が家に入ってこないらしい。また、イワシを食べると体内の「陰気を消す」という意味もあるといわれている。イワシは栄養価も高く、特に寒いこの時期に無病息災を祈って食べられるのだろう。それにしてもイワシを漢字で「鰯」と書くように、「弱い」という字が入っている。すぐに弱ってしまう魚が鬼を退治する効果抜群とはよほどの匂いなのだろう。鼻が曲がるぐらい臭い食べ物を口にするのは気が引ける。以上、厄除けは完璧にしたにもかかわらず、眼が鬼のように赤くなってしまった。土曜日ということもあって眼科を受診できず、グーグルで症状と対処法を調べてみた。どうやら正式には「結膜下出血」といい、結膜下の小さな血管が破れて出血したもので、白目部分がべっとりと赤く染まってしまう。原因は、くしゃみや咳、過飲酒とある。酒は飲んでいなかったので、寝ている間のトラブルだろう。視力の低下もなく、治療も必要ないそうだ。今のところ、痛みもないし、目やにも出ない。節分は食べるだけで豆撒きをしていないので、豆が眼球に当たった可能性もない。眼科を受診したところで、取り越し苦労になりそうだ。年長者の知恵が役に立つ。「蒸しタオルで温めてみたら」と、電話で母から言われた。
イガチョフ