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イガチョフ

副菜

 昨日は朝から霧雨が降る寒空だった。息子は先週から咳が止まらない。風邪ではないが喉の調子が悪く、模擬試験でも本調子が出なかった。のど飴で誤魔化しながら勉強を続けている。朝の着替えの時軽く暖房をつけなければ肌寒く感じる。「リラ冷え」という言葉通りの季節だ。花壇の花の勢いも弱まった。洗濯物も半乾きだ。朝食の準備で火を使うので多少部屋があったまった。ご飯を食べたらコーヒーでも淹れてゆっくりしたかったが、金平ごぼうを作ることを優先した。子供たちが学校へ弁当を持っていくので、どうしても副菜が足りなくなる。晩御飯はおかずを一品作ってあとは味噌汁とサラダ、そして作り置きのおかずを用意する。副菜さえ作っておけば食事の心配は減る。自分は体調が悪くなると、この副菜作りができなくなる。冷蔵庫のタッパの数がどんどん少なくなっていく。買出しもおっくうになるので食材が底をつく。こうなると危機的状況に追い込まれる。自分一人で生活しているのならどうとでもなるが、育ち盛りの子供二人を食べさせなければならないから逃げることができない。以前ホームヘルパーに調理をお願いしていた。その頃はレパートリーが少なく大助かりしたのを覚えている。ヘルパーさんと世間話をしながらの時間は気が紛れた。揚げ物のコツは見ているうちに盗んでしまった。今では天ぷらが得意料理になっている。油跳ねもせずにコンロをきれいに保つことができる。子供たちも手料理の味になれたせいか、レトルト食品は受け付けない。なので、いつの間にか調味料が増えてしまった。メインのおかずは料理アプリを活用して作っているので、毎日違うメニューが食卓に上る。「これ美味しいからまた作って」と言われても、レシピを保存するのが面倒なので一回ぽっきりのご馳走になる。自分の好物は稲荷寿司と納豆巻きで、手間をかけてまでつくろうとは思わないので、たまにスーパーで買ってくる。この二つが自分にとっての唯一の贅沢だ。きっと大金持ちになってもこの贅沢は変らないだろう。

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