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イガチョフ

台所

3月も終わりだ。通りのあちこちで雪割りに精を出す人が見られる。スコップは使い慣れているようだが、つるはしは要領が悪い。札幌にもようやく春がやってきた。クロッカスが花開くのも間じかだろう。まけまけの午後は西日が入り室内が明るくなる。もう暖房も必要がないくらい暖かい。授業が終わり外へ出ると突風が吹き、埃が舞い上がって眼を細めなくてはならない。自転車に乗る学生が目に付くようになった。晩御飯は簡単にチャーハンにするつもりで考えていたが、時間に余裕があるのでモヤシを買い調理することにした。豚肉は冷凍庫にスットクがあるので、甜麺醤で炒めればいい。一人暮らしと違って家族がいる身なので、毎日献立で頭を悩ませている。まけまけの帰りにスーパーと八百屋を覗きお買い得の食材を調達する。惣菜コーナーは素通りしている。冷凍食品も全く手にしない。忙しくて調理できない事態になることは滅多にない。冷蔵庫には作り置きの副菜を常時数品ストックしており、冷凍している魚を解凍し焼けば事足りる。朝食も夕食も味噌汁を欠かしたことはない。全員が納豆好きなので食べ続けている。自分で作って美味しいと思えるから幸せだ。もう18年近く包丁を握っている。もともと飲食店でのアルバイト経験があるので、料理は苦にならなかったが、ホームヘルパーを利用した時期もある。他人に台所に立たれるのは違和感があって、すぐにやめたが、苦手だった揚げ物のコツを習得できたのは良かった。ヘルパーは所詮主婦でしかないので期待できないが、どの家庭も料理のレパートリーは少ないものなのだとわかった。作ってもらう料理のレシピを用意すると、「こちらのご家庭で料理をすると勉強になります」と言われた。料理は頭が良くないとできない。段取り勝負だからだ。狭い台所なので先を読んで作らないと時間と手間ばかりかかってしまう。作る時は料理番組のように声を出して解説しながら調理している。子供たちは食べられて当たり前と思っている。いただきますの一言が欲しい。

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